japan2020 人工知能と日本再考→再興

不易流行---変わらない真理と変わるトレンド

自動運転は電気自動車より簡単!

 電気自動車がガソリン車よりも優位に立つためには、価格や走行距離、充電などクリアすべき課題が多い。だから、2010年末に鳴り物入りで登場した日産リーフも苦戦している。

 電気自動車の製造コストの約半分は、電池が占めている。そして、課題の解決には電池の改良が不可欠だ。電池の改良は難しく、課題解決への技術的な道筋は視界不良と言わざるをえない状況だ。

 一方、自動運転は人間が運転しなくて良いという、ガソリン車と電気自動車の違いとは次元が異なる領域での、フロンティアである。

 自動運転における課題は、本当に人間が関与せず、実際に運転できるか、という問題である。この点に関しては、技術的な課題は、基本的には解決されていると言っても良い。だからこそ、グーグルは先行して公道実験を重ねている。

 日本が自動運転のトップランナーになるためには、一日も早く、自動運転の公道実験を開始し、実際に事故が起こらないということを証明すべきだ。

自動運転はインターネットと同様のインパクトを持っている

 「インターネットによってカタチの無い資産であるデータが自由に行き交う」

自動運転はインターネットと同様のインパクトを持っている。

つまり、最初の文と同じ構造でメッセージを書けば次のようになる。

 「自動運転によってカタチの有る資産であるモノやヒトが自由に行き交う」

 そして、インターネット同様、行き交うモノやヒトに対して直接的な働きかけは、人間ではマシンが行うこととなる。

 しかしながら、データの作成や加工には人間が関与するように、モノやヒトの動きの中間地点や最終地点では人間の関与があると考えている。

 新しい世界を想い描いて、人間にしかできないことを、ちゃんとやって行こう。

日本は戦争なんて絶対しない!

 安保法制に関連して「戦争を起こすつもりか」的な議論をする人たちがいる。「戦前と似てきた」というコメントを発表する人もいる。

 でもね、今の日本は絶対に戦争なんて起こせない。世界価値観調査によれば「戦争が起きた時に、国のために戦えますか?」という問いに対してイエスと答えた人の割合は日本では15%だそうだ。これは感覚的にも合っていて、10人中、一人か二人は奇特な人がいるということだろう。

 戦前のことは産まれる前のことなので、僕には分らない。でも、文章や映像で知っている戦前の印象は、先ほどの質問に対する答えの割合は逆になる。つまり、国のために戦うのはイヤだと(正直に?)答える人の割合が、10人中、一人か二人という感じだ。

 なぜ、戦前は戦争に対して肯定的だったか。この答えは、日本が日清戦争日露戦争に勝利したからだろう。両戦争の敵国である中国もロシアも大国だ。まともに戦って勝てる相手ではない。それが、日清・日露のときは、敵失が主因で勝ってしまった。この成功体験があったから、日本は調子に乗って、アメリカとまで戦ってしまった。

 日清・日露の勝因を正しく分析していれば、日本がアメリカと戦って勝てないことは明確だった。しかし、成功体験が強すぎて、戦前の日本は戦争に肯定的だった。

 一方、現状は当時と全く異なる。戦争は良くないもの、絶対、起こしてはいけないものとの教育が徹底している。そして、国のために戦おう、なんていう元気のある若者は滅多にいない。

 だから、今の日本は、絶対に戦争なんてしない。

ソニーが自動運転に乗り出しても良い

 ソニーは昨年10月、車載センサーを発表した。カメラによる技術蓄積があるのだから、当然の戦略だと思う。

 個人的には、もっと踏み込んで、ソニーが自動運転に乗り出しても良いと考えている。何せ、世界で一番、自動運転に近いのはグーグルで、自動車メーカーではない。ソニーが自動運転に乗り出しても何ら不思議ではない。

 グーグルの自動運転車の上で、クルクルと象徴的に回っているLiDARを作っているVelodyne社は、もともと音響関連のベンチャーだった会社だ。だから、ソニーだって、作ろうと思えば、LiDARは作れるだろう。

 競争が激しい時代、ライバルは誰かがハッキリしない。逆に言えば、展開が期待できる分野であれば、ドンドン参入を検討すべきだ。

センサーの進歩がマシンに新たな意義を与える

 自動運転に欠かせないのが、センサーだ。センサーは人間の五感に相当する。

 人間は情報の約8割を眼から得ていると言われている。生物がカンブリア爆発を起こしたのは、眼の誕生によるものだとする説がある。自動運転のセンサーも人間の眼に相当すると言っても良いかもしれない。

 実は今でも、クルマをセンサーとして有効活用することは可能だ。例えば、クルマのワイパーの使用データを位置情報と共に集められれば、どこで雨が降っているかが分かる。ワイパーは3段階程度に使用状態を選べるので、その使われ方によって、雨の降り方の強弱が分かる。

 クルマをセンサーとして使い、クルマの記録した映像を利用して、犯罪の解決に役立てることも可能だ。使い道は考え方次第で、いくらでも出て来るだろう。

 センサーの進歩がマシンに新たな意義を与える、ということを念頭に置いておくと良い。

【自動運転】リニアや半導体の二の舞はゴメンだ!

 自動運転は、なるべく早期に実現し、グローバル市場を意識すべきだ。

 リニアカーなんて、今から50年以上前、1962年から研究を開発しているのに、未だに日本では実用化されていない。研究者としては、完成度の高いものを世に出したいと考えているのだろうけど、ゼロ・リスクを追究すれば、世界からドンドン後れを取ってしまう。

 そもそも、自動車事故の90%以上が人的ミス(ヒューマン・エラー)によって起きているという事実を考えれば、人間がハンドルを持たなければ、事故は激減することが分かる。コンピュータは人間と違って、居眠り運転や脇見運転をしない。人間の運転より自動運転の方が安全だ。

 半導体市場において、一時期、日本メーカーが世界市場を席巻した。何しろ、1980年代中頃の日本メーカーの世界シェアは80%を超えていた。しかし、その後、日本メーカーは対応を誤った。

 コンピュータを作る側が当時、主流だったホスト・コンピュータ用に25年保証の半導体を要求し、半導体を作る側も、この要求に応えて、高品質路線を取ってしまった。つまり、高品質・高価格の半導体を作ったのだ。

 ちょうど、その頃、ホスト・コンピュータからPCへのパラダイム・シフトが起こった。韓国メーカーは25年保証の半導体は出来ないが、10年保証の半導体を作り、PCメーカーに売りまくった。

 結果的に、半導体市場において、高品質・高価格の日本製は、中品質・中価格の韓国製に敗れることとなった。

 自動運転は日本だけでなく、欧米も市場になる。その際、必要以上の高スペックで闘うべきではない。必要にして十分(Good Enough)な品質と価格で勝負すべきだ。

日本人最大の弱点は《情》

 最初に断っておくけど、これは「スター・トレック  イントゥ・ダークネス」のキャッチコピー「人類最大の弱点は《愛》」のパクリだ。

 昔ならイザ知らず、いまの日本においては、老人=弱者という考え方は成り立たない。世代間闘争を煽る気持ちはないが、若者の方が弱者かもしれない。

 老人のなかにも、若者のなかにも、弱者もいれば、強者もいるというのが実態だろう。

 しかし、少子化が進む現状を踏まえると、例えば賦課方式の年金制度は、数が少ない若者いじめじゃないかと思う。

 確かに年をとれば、誰でも足腰が弱り、情をかけてもらう側になるのかもしれない。それはそれで分かるが、老人と若者の人数比を考えた場合、若者に頼りすぎの気がする。若者は、あまりの負担に次世代を再生産する気が失せて、少子化が加速しているのが、現在の日本だろう。

 政治家が大票田である老人に配慮した政策を取るのは民主主義の限界だと思う。若者が選挙に行かないと批判する人がいるが、そもそも絶対数が少ないので、選挙に行っても、若者は勝てない。選挙制度を変えて、一人一票ではなく、余命に応じた選挙権を配布するといった工夫をすべきだと思う。

(議論が飛ぶが、国債は将来の課税である。したがって、国債発行時に選挙権のなかった若者にはアメリカ独立戦争で有名になった「選挙権なければ課税なし」の原則が適用され、国債償還にかかる負担は若者には生じないのが筋だろう。もっとも、法廷闘争をしても司法は、法的安定性という訳の分らない説明をして負担を強いることになるのがオチだろう。)

 新国立競技場をイチから出直すことにしたのと同様、年金制度を始めとした今の各種制度を根本から考え直すことが必要だ。その際、日本の将来のことを是非、考慮に入れてほしい。遅きに失した感もあるが、日本が出直す最後のチャンスだと思う。