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平和な時代が格差を拡大する

 格差拡大が話題になっている。ピケティの「21世紀の資本」が格差議論を加速させているのだろう。でも、考えてみると平和な時代には格差は当然のように拡大するものだと思う。

 簡単な例で考えてみよう。(以下、税金等は考えない。)

 Aさん、Bさんの年収を400万円、800万円と仮置きして、年間支出を300万円と600万円と仮定しよう。年収と年間支出の差を貯蓄するとした場合、年間貯蓄額は100万円と200万円になる。この状態が10年続けば、二人の貯蓄額は1,000万円と2,000万円で格差がドンドン開いていくことととなる。

 資本主義は資本の蓄積が社会の進歩に結び付く。平和な時代に資本の蓄積が進むことは良いことだが、個人レベルでみれば、格差が拡大することを意味する。

 ピケティの力作はデータに裏付けられた主張だ。以前、ステグリッツが同様の調査をしたときは、戦争(第一次世界大戦第二次世界大戦)の時代が対象期間の大きな部分を占めていたので、ピケティとは異なった主張(格差は次第に解消する)が導かれたのだろう。

 戦争や革命といった社会を根底から揺るがすガラガラポンが起きない、安定した平和な時代においては格差は拡大する。

 そして、格差の拡大が臨界点を超えたとき、ガラガラポンが起こる。格差が国家間で生じれば、それは戦争になるし、格差が社会的な階層間で生じれば、それは革命になる。

 ガラガラポンは社会に生じた歪(ひず)みを是正するイベントだ。だけど、地震が地層の歪みを是正する際に、大きな被害を引き起こすように、ガラガラポンは強烈な痛みを伴う。

 格差を是正する仕組み作りをしないと、持てない側も、持てる側も、傷を負うことになる。みんなを不幸にする戦争を避けるべきなのと同様、格差解消をガラガラポンに頼るべきではないと考える。