自動車産業が半導体産業の轍を踏まないことを願う
湯之上隆氏の「日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ」(文春新書)を読んだ。大変、勉強になった。
1980年代に世界一の座にあった日本の半導体産業が、1990年代に韓国のサムソン電子に負けた敗因は、変わることが出来ない日本企業の体質だった。
日本の半導体産業が世界一の座にあった1980年代、コンピュータはメイン・フレーム全盛の時代だった。
メイン・フレームに使われる半導体には25年というトンデモナく長い期間の品質保証が求められた。しかし、そんな無茶な要求には、普通は応えられない。応えることができたのが日本企業だったので、日本の半導体産業は世界一の座を獲得できた。
しかし、時代は変化する。199年代以降、コンピュータはメイン・フレームからPCの時代へ移行する。
PCにおいて求められる半導体は、保証期間は3年で良いかわりに、金額の安い半導体だった。そして、サムソンは市場のニーズに合致した半導体を適切な歩留まり率をキープしつつ、世に送り出した。
一方、日本の半導体メーカーは、PCの時代になったことは分っていたのかもしれないが、品質も価格も高い半導体を市場に供給し続けた。そして、シェア競争に負けていった。
日本の半導体産業で起こったことが、日本の自動車産業で起こらないとも限らない。
自動車産業が半導体産業から学べることは、「過去の成功体験に囚われず、常に市場が求めているものを提供することが、生き残る秘訣である」ということだろう。
湯之上氏の著作には「零銭・半導体・テレビ」との副題が付いている。この副題の後に、「自動車」の文字が加わらないことを願っている。